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 ■終末医療とホスピスの研究 

 
 
   ホスピスとは何か


  
  
ホスピスの歴史  修道院とホスピタル (世界の医学史から) 

 
中世ヨーロッパの医療は、主として巡礼教会と修道院の果たした役割が大きい。中世以来の修道院では、自給自足の生活を行い、農業から印刷、医療、大工仕事まですべて修道院の中で手分けして行っていた。
 そこから新しい技術や医療、薬品も生まれている。ヨーロッパに古くからある常備薬には、修道僧や修道女の絵柄が多いのはそのためである。
 ヨーロッパのワイン、リキュール(薬草酒等)、ビールは、今でも修道院で醸造されているものも多い。
 こうした薬草による常備薬や、薬草酒などが製造されてきたのも、修道院における医療行為に由来している。またヨーロッパにおける病院の始まりも、そのルーツは修道院の施療院である。

 社会的弱者の貧者でも、医療が受けられるようにと、修道院や巡礼教会が施療院を付属させるようになった。貧富を問わず全ての人々を救済するという、キリスト教精神が、そのまま施療院の運営の精神であった。 初めは癩病者などの看護や介護が主体であったが、次第に修道院の薬草園で生産された医薬品を使ったり、医者が常駐して手術などの本格的医療行為も試みられるようになった。修道院では、修道僧が医師をかねる場合が多かった。


          サン=ジャック施療院
            サン=ジャック施療院

 
中世盛期の施療院の普及には三つの段階があった。
 11~12世紀には、教会改革とクリュニー派、シトー派の修道院に続いて、巡礼者のための施療院(hospitalia)・宿坊(hospitia)が、修道院、国王、領主によって建てられ飛躍的に増加していった。12世紀中葉以降は、貧困について新たな意識を持って寄進する信徒たちによってが建立されるようになった。
 13世紀中葉から14世紀には、都市や他の共同体によって独立した施療院が運営されるようになっていく。12世紀中葉の第二段階までは、建立された施療院を「十字架騎士修道会、アウグスティヌス聖堂参事会、兄弟会」によって運営されていることが多かった。一部は巡礼者や旅人のために、また一部は地域の貧者のために役立った。
 中世後期には数多くの施療院が建立されたが、そのうちかなりのものは「主に貧者・病者の世話をするためのもの」と決められていた。貧者施療院・病者施療院の増加に反して、巡礼者・旅人のための施療院は確実に減っていった。

 こうした中世の施療院での医療行為の功績は、ユナニ医学の集大成を行ったローマ時代の医師ガレノスが体系づけた医学知識を、そのまま近世まで伝える役割を果たした。
 大教会や大修道院は、古代ギリシャのヒポクラテスの『ヒポクラテス全集』やその他の著作、ローマ時代のガレノスの著作全集22巻その他、古い医学文献を収集し、忠実に書き写して保存するという医学図書館のような存在でもあった。これによってヒポクラテスの精神が現在でも知られ、ガレノス医学が千年以上にわたって実践の医療として伝承されていった。さらには、修道院の医療を受けつぐ医者を育成する使命から、キリスト教会の資本によるサレルノ医学校や、後のボローニャ大学、パリ大学などの大学のはじまりにつながっている。こうしたキリスト教会の支援による中世ヨーロッパの大学には、神学部、法学部、医学部、哲学部の四学部が置かれ、近代の大学制度の原型となっている。

      
        

 
  
現代でのホスピス現状

 中世ヨーロッパの修道院や巡礼教会の施療院が、巡礼者や旅人を宿泊させ、歓待した事をホスピス(hospice)と言った。
 修道院で歓待する心(hospitality)が、今日の病院(hospital)の語源でもある。
 が、今日では、主に末期癌患者に対して緩和治療や、終末期医療、つまりターミナルケアを行う施設のことをさしている。
 自らの意思と選択で、人生最後の時間をを少しでも快適に生き、その結果として安らかな尊厳に満ちた死を迎えたいという療養施設のことである。

           16世紀のミシェル病院
              16世紀のミシェル病院

 最新の先端医療でも、間もなく死が訪れるという運命を変えることができない時期を、終末医療期と定義する。
 この時期を超えると、医療の役割は病気の治療から、症状の緩和へと大きくシフトしてターミナルケアという。

 この終末医療期では、死に対する不安や恐怖が大きくなるが、医療自体は本質的な解決策を提供することはできない。
 終末期を悟った人は、一時的には精神的に追い込まれた状態に陥るが、やがてターミナルケアによって諦観が生まれ、それなりに悟りを得て最後を心静かに迎えることになる。 
 

 内閣府の平成24年の「高齢者の健康に関する意識調査」では、「万一、治る見込みがない病気になった場合、最期はどこで迎えたいか」との質問に、54.6%の人が「自宅」と答えている。

 一方、「病院などの医療施設」と答えたのは、27.7%にすぎない。つまり
終末期医療、つまりターミナルケアを行う病院施設や、介護施設で、人生の最後を迎えたいと思っている人は少ない。
 しかし、実際には病院や介護施設で亡くなる人が8割を超えている。

 また、死期が近くなったとき、延命のための医療を受けることについて、
 「延命のみを目的とした医療は、行なわないで欲しい」と答えが9割を超えている。
 延命治療を続けることは、呼吸や栄養・水分補給、排せつなどのために、多数の管を身体に差し込まれた状態で、最期を迎えることを希望しないという考え方である。
 唯一の希望は、末期癌などではペインコントロールによる痛みからの開放だけである。

             終末期医療を何処で受けるか


 「終末期医療に関する調査」によると、高齢で日常生活が困難になり、さらに治る見込みのない状態になったとき、病院や介護施設で最期まで療養したい理由では、
  「家族の介護などの負担が大きいから」(85.5%)、
  「緊急時に家族へ迷惑をかけるかもしれないから」(53.3%)
 と回答した人が多くなっている。つまり自分の意向よりも、愛する家族への配慮を優先する考え方によるものと思われる。

  平穏死、自然死、尊厳死。
  つまりは「ピンピン、コロリ」と、最後は自分らしく、しかも苦しまずに、あっけなく迎えたいというのが、すべての人々の願いであろう。 誰もが希望する、人生最後で、最大の願いを叶えることができているのは、残念ながら、十人に一人にすぎない。

  このホスピスのコーナーでの主題は、誰も死から逃がれられないが、
  恐れながら死をただ待つのではなく、死ぬまでの時間をより積極的に生きること、医療に生かされるのではなく、自らの生命力で人生を全うすることを考えた行きたい。


           平穏死、自然死、尊厳死

 さらに云えば、自分の最後の日を、医者でなく自分で決めたいのである。
 死期は医者が決めるのではない。
 生命の持つ寿命が尽きるときが、死期である。
 最後の命の炎を、尊厳を持って、自分自身で、そっと吹き消したいのである。
 自殺ではなく、自身の意志で、自らの死期を撰んだ有名な禅師がいたのである。



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  医師と患者の権利と義務
      公的機関の判断

 


 
患者の権利に関する世界医師会(WMA)リスボン宣言

 1981年9月/10月、ポルトガル、リスボンにおける第34回WMA総会で採択
 1995年9月、インドネシア、バリ島における第47回WMA総会で修正
 2005年10月、チリ、サンティアゴにおける第171回WMA理事会で編集上修正

 【序文】
 医師、患者およびより広い意味での社会との関係は、近年著しく変化してきた。
 医師は、常に自らの良心に従い、また常に患者の最善の利益のために行動すべきであると同時に、それと同等の努力を患者の自律性と正義を保証するために払わねばならない。以下に掲げる宣言は、医師が是認し推進する患者の主要な権利のいくつかを述べたものである。医師および医療従事者、または医療組織は、この権利を認識し、擁護していくうえで共同の責任を担っている。法律、政府の措置、あるいは他のいかなる行政や慣例であろうとも、患者の権利を否定する場合には、医師はこの権利を保障ないし回復させる適切な手段を講じるべきである。

訳:日本医師会


               世界医師会





 
良質の医療を受ける権利(リスボン宣言

 1.すべての人は、差別なしに適切な医療を受ける権利を有する。

 2.すべての患者は、いかなる外部干渉も受けずに、自由に臨床上および倫理上の判断を行うことを認識している医師から治療を受ける権利を有する。

 3.患者は、常にその最善の利益に即して治療を受けるものとする。患者が受ける治療は、一般的に受け入れられた医学的原則に沿って行われるものとする。

 4.質の保証は、常に医療のひとつの要素でなければならない。特に医師は、医療の質の擁護者たる責任を担うべきである。

 5.供給を限られた特定の治療に関して、それを必要とする患者間で選定を行わなければならない場合は、そのような患者はすべて治療を受けるための公平な選択手続きを受ける権利がある。その選択は、医学的基準に基づき、かつ差別なく行われなければならない。

 6.患者は、医療を継続して受ける権利を有する。医師は、医学的に必要とされる治療を行うにあたり、同じ患者の治療にあたっている他の医療提供者と協力する責務を有する。医師は、現在と異なる治療を行うために患者に対して適切な援助と十分な機会を与えることができないならば、今までの治療が医学的に引き続き必要とされる限り、患者の治療を中断してはならない
 (日本医師会ホームページ内「患者の権利に関するWMAリスボン宣言」より)



 
平成19年2月尊厳死の東京高等裁判所判決

 「尊厳死の問題は、より広い視野の下で、国民的な合意の形成を図るべき事柄であり、その成果を法律ないしこれに代わり得るガイドラインに結実させるべきなのである。 (…中略…)
 「この問題は、国を挙げて議論・検討すべきものであって、司法が抜本的な解決を図るような問題ではない」
 と明示している。
 
 国民的な議論の必要性が呼びかけ、治療行為(延命)中止が認められる要件について、独自にガイドラインを定めた学会や、医療機関などもあるが、それはまだ一部の分野や施設である。

                 日本医師会
 
                   日本医師会


 
「終末期医療に関する調査等検討会報告書」(平成16年厚生労働省)(抄)

 ・終末期において、延命のための医療行為を開始しないこと(医療の不開始)や、行っている延命のための医療行為を中止すること(医療の中止)に関して、どのような手順を踏むべきか、医師をはじめ医療関係者の判断基準が明らかでない。

 •患者の意思を踏まえた個々の医療行為の是非は、医療サイドの判断でどういう手順を踏んで、医療の不開始・中止を決めることが妥当なのか、どのような行為が合法なのか、医師をはじめ医療関係者の判断基準が明らかでない。

 •患者本人は、早く苦痛から解放してほしいが、家族は単なる延命医療の継続を選択する傾向がある。(中略)
 患者本人の意思と、家族のそれとが必ずしも一致しないことが、医療現場での葛藤を生み出していると考えられる。
 また、高齢者医療では家族の意向が中心となり、患者本人の意思が二次的なものとなっているという指摘がある。


 
 
平成16年の「終末期医療に関する調査等検討会報告書」では、
 医療現場の悩みが解消され、富山県で起きた医師による安楽死事件ような事例が今後発生しないようにするためには、各施設において終末期医療のあり方に関する何らかの基準を定める必要がある。
 しかし、厚生労働省の「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は、手続きに限定した内容であるため、それをもとに治療中止のあり方を含めた指針を作成することは困難である。

 今後は、医療の透明性を図りながら、その実現のための医療従事者のコミュニケーション技術の向上や、患者の事前の意思表示(リビングウィル)の普及啓発などに取り組むことが課題であろう。治療中止の要件を定めることの是非も含め、そのあり方や方法について議論が重ねられることが求められる。

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厚生労働省 検討会報告書の概要


 意識調査の概要
 
 意識調査に当たっては,一般国民,医師,看護職員,介護施設職員(介護老人福祉 施設の介護職員をいう以下同じ)の計 13,794人を対象として実施した。
 高齢化の 進展に伴い,介護老人福祉施設で最期を迎える人が増えてきたため,前回の調査では 対象としなかった介護施設職員を初めて対象に含めた。



 病名や病気の見通しに対する説明と治療方針の決定

 終末期医療については,一般国民(以下,般),医師(医),看護職員(看),介護 施設職員(介)それぞれで,年齢によらず,どの年齢層でも関心が高い(般 75~84 %,医 86~100%,看 57~97%,介 92~100%)。
 
 ○自分が治る見込みがない病気に罹患した場合に,病名や病気の見通し(治療期間, 余命)について知りたいと回答した者の多くは,担当医師から直接説明を聞きたいと 考えており(般 92%,医 98%,看 98%,介 96%) ,医師,看護職員,介護施設職 員の過半数は治療方針の決定に当たって「患者本人の意見を聞く」「患者本人の状況 を見て誰にするか(意見を聞くか)を判断する」としている(医 71%,看 88%,介 63%)(図1)。
 
 ○このことは,病名や病気の見通しは患者本入に説明し,治療方針を決定するに際し ては,患者本人の意向を中心にすることが医療関係者の基本となっているものといえ る。
 また,治療方針の決定に当たって,「患者本人の意見を聞く」と回答した者(医 14%,看 17%,介6%)よりも,「患者本人の状況を見て誰にするか(意見を聞く か)を判断する」と回答した者が多く(医 57%,看 71%,介 57%) ,前回までの調 査よりは「患者本人の意見を聞く」が若干増加している(医5%,看1%の増)
 
 ○このことは,医療関係者が,患者本人の意思決定能力,家族の状況や気持ちを 踏まえて,誰に説明するのが適切かを判断して説明していることをうかがわせるもの である。
 終末期医療の現場において,患者本人に対する説明を基本におきながらも, 患者本人の状況を見つつ説明する相手方を決めていく現実的な対応をとっていると考 えられる。また,高齢者医療では,終末期に脳血管障害や痴呆等の疾病のため,患者 にいわゆる「意思決定能力」がない場合も多く,患者本人の状況を見て誰に説明し、意見を聞くかを決定するということが現実的であることも多い。 今後は,医療は患者が選択し参加するものであるという意識が一層進むことが考え られることから,患者,その家族と医療関係者が十分に対話を行い,信頼関係を構築 し,患者自身の選択や主体性が十分に尊重されるようにすることが重要であると考え られる。
  
 ○自分が痛みを伴う末期状態(死期が6カ月程度よりも短い期間)の患者になった場合, 単なる延命医療について
 「やめるべきである」 「やめたほうがよい」と,中止することに 肯定的である者は多く(般 74%68%>,医 82%81%>,看 87%82%>,介 83 %),
 「単なる延命医療であっても続けられるべきである」と考える者は少ない(般 13% 16%>,医9%9%>,看6%7%>,介8%)。

 


 終末期医療の在り方
 
 自分が痛みを伴う末期状態(死期が6カ月程度よりも短い期間)の患者になった場 合には,単なる延命医療をやめることに肯定的である者も多く(般 74%,医 82%, 看 87%,介 83%)(図2) ,その多くは,単なる延命医療を中止するときに,「痛み をはじめとしたあらゆる苦痛を和らげることに重点をおく方法」(緩和医療)を選択し(般 59%,医 84%,看 83%,介 75%) ,「あらゆる苦痛から解放され安楽になる ために医師によって積極的な方法で生命を短縮させるような方法」(積極的安楽死) を選択する者は少ない(般 14%,医3%,看2%,介3%)。
 痛みを伴う末 期状態となった場合,一般国民は単なる延命医療をやめることには肯定的であるが, その場合でも積極的な方法で生命を短縮させる行為は許容できないというのが,一般国民の間でほぼ一致していると考えられる。

 ○自分が痛みを伴う末期状態の患者(死期が6カ月程度よりも短い期間)になった場合に 単なる延命医療を中止することに肯定的である者の多くは,延命医療を中止するときに 「痛みをはじめとしたあらゆる苦痛を和らげることに重点をおく方法」を選択し(般 59% 70%>,医 84%,看 83%,介 75%),「あらゆる苦痛から解放され安楽になるために, 医師によって積極的な方法で生命を短縮させるような方法」を選択する者は少ない(般 14%13%>,医3%,看2%,介3%)。

       リビング・ウィル カード
 
          


 リビング・ウィル

 書面による生前の意思表示の考え方に「賛成する」に回答した者は、過半数となっており〔般 59%(48%) ,医 75%(70%),看 75%(68%), 介 76%。 ( )内は前回調査結果,以下同じ〕,書面で目分の意思を明示しておくと いうリビング・ウィルの考え方が国民の間に受け入れられつつあると考えられる。

  また,書面にする必要はないが, 「患者の意思を尊重するという考え方には賛成す る」者を含めると,治る見込みがなく,死期が近いときの治療方針に関し,国民の多 くは,患者本人の意思を尊重することに賛成している(般 84%,医 88%,看 89%, 介 87%) (図4) 。
 
 しかしながら,書面による本人の意思表示という方法について,「そのような書面 が有効であるという法律を制定すべきである」とする国民は,半数を下回っている (般 37%,医 48%,看 44%,介 38%)(図5)。
 
 今回の調査の結果をみるかぎりでは,現状においてはリビング・ウィルを法制化す ることに,国民の多数の賛成は得られていないとしても,リビング・ウィルという考 え方には多数の国民が賛成していることがうかがわれる。
 よってなんらかの形で自己 の終末期医療について意思を表明した場合,その人の意向は尊重されることが重要で あり,このような考え方が社会の大きな流れになって医療現場に定着していくことが 大切である。

 
 
 患者の意思の確認


 患者の意思をどのように確認するかについては,さまざまな場合に対応した,具体 的方法を考える必要がある。書面による方法は患者の意思を確認する一つの方法では あるが,事前の意思表示の形式は一つに絞らず,書面を含めてさまざまな形式があっ てよいと考えられる。
 
 また,患者の意思は状況に応じて変化するため,意思確認は何 回も繰り返し行うことが適切である。 事前に患者本人の意思が確認できない場合,患者本人の代わりに,家族や後見人が 治療方針などを決定する(代理人による意思表示)という考え方には,過半数の者が 「それでよい」 ,または「そうせざるをえない」と回答しており,肯定的である(般 57%,医 67%,看 62%,介 60%)(図6)。 また,医師などの医療関係者と患者との間に日頃から信頼関係が構築されているこ とが,終末期において,患者の意思に沿った医療の基本となる。したがって,医療関 係者は患者との信頼関係を築く努力をすべきである。

 ○リビング・ウィル(書面による生前の意思表示)の考え方について,「賛成する」とい う意見は,前回調査時点よりも増加して過半数となっており(般 59%48%>,医 75% 70%>,看 75%68%>,介 76%),「患者の意見の尊重という考え方には賛成するが, 書面にまでする必要がない」と回答した者(般 25%35%>,医 13%18%>,看 14% 19%>,介 11%)も含めると,死期が近いときの治療方針に関し,国民の多くは患者本 人の意思を尊重することに賛成している(般 84%83%>,医 88%88%>,看 89% 87%>,介 87%)。


            


 医療現場の悩み


  終末期において,延命のための医療行為を開始しないこと(医療の不開始)や,行っている延命のための医療行為を中止すること(医療の中止)に関してどのような手 順を踏むべきか,医師をはじめ医療関係者が悩むことは多く,判断基準が明らかでな い。患者の意思を踏まえた個々の医療行為の是非は医療サイドの判断ではあるが,延 命のための医療行為を開始しないこと(医療の不開始)や,行っている延命のための 医療行為を中止すること(医療の中止)に関して,どういう手順を踏んで決定するのが妥当なのか,どのような行為が合法なのか判断基準が明らかでなく,医師が悩む場 面は多い。
 
 他方では,患者本人の意思と、家族のそれとが一致しているかが問題になることもあ る。
 自分が痛みを伴う末期状態の患者になった場合に「単なる延命医療はやめるべき である」という回答(般 21%,医 34%,看 25%,介 21%)に比べ,自分の患者また患者本人以外による意思確認について、事前に本人の意思の確認ができなかった患者の場合, 家族や後見人が,患者本人の意思の代 わりとして治療方針などを決定する(代理人による意思表示)という考えについては,過 半数が「それでよいと思う」、「そうせざるを得ないと思う」と、肯定的である(般 57%57 %>,医 67%61%>,看 62%51%>,介 60%)。代理として意思表示をする人として は,配偶者を適当とする者が過半数を占める(般 63%,医 73%,看 66%,介 63%)。
 
 または家族がそのような患者になった場合に「単なる延命医療はやめるべきである」と いう回答(般 12%,医 19%,看 13%,介 11%)の方が少なくなっている。
 この調査結果では,患者本人は,早く苦痛から解放してほしいが,家族は単なる延 命医療の継続を選択する傾向があるということを示しており,患者本人の意思と家族 のそれとが必ずしも一致しないことが医療現場での葛藤を生み出していると考えられ る。
 
 また,高齢者医療では家族の意向が中心となり,患者本人の意思が二次的なもの となっているという指摘がある。
 終末期における望ましい医療の内容は,医師の裁量にかかわるので,基本的には, 専門学会,医療機関,医師会等が協力してガイドラインを作成し,その普及を図って いくことが考えられなければならない。
 また,医療の不開始・中止の是非の決定につ いても同様である。その際,国はこれらの動きに対して必要な支援を図っていくべき である。 終末期医療に対する社会的コンセンサスは今後ますます重要な課題となっていく。 医療の不開始・中止,特に患者本人の意思・家族の意向の確認方法について,医療関 係者や国は,国民の理解を得る努力を重ねていかなければならない。また,それとと もに法律家・生命倫理の研究者など有識者も交えた上での国民的議論が十分に尽くさ れ,適切な結論を得ていく必要がある。


 
 末期状態における療養場所

 
 自分が痛みを伴う末期状態(死期が6カ月程度よりも短い期間)の患者になった場 合,多くの一般国民は,自宅療養をした後で必要になった場合には緩和ケア病棟また は医療機関に入院する(般 48%) ,あるいはなるべく早く緩和ケア病棟または医療機 関に入院することを希望している(般 33%)。

 一方,自宅で最期まで過ごしたいとい う人は少ない(般 11%) (図7) 。
 がんの末期で痛みを伴った患者の療養に当たっては,最後の1,2カ月に患者の苦 痛が強くなり,患者,家族への負担が増すことが多いことから,最期まで自分らしい 生活をできるよう,早い時期から,心のケアを含めた必要な医療や介護を適切に行う システムを構築することが望ましい。
  今後は,患者が自分の状況に合わせて病院,ホスピス・緩和ケア病棟,自宅での在 宅療養といったさまざまな体制を選択することを可能とするために,在宅医療・介 護,病院,ホスピス・緩和ケア病棟が、相互に補完しあって連携するという包括的な保 健・医療・福祉サービス提供体制の整備が必要である。
 また,がんの末期のように, 患者の苦痛がひどく,複雑で困難な状況にある場合は,必要に応じて緩和ケア専門家 のコンサルテーションを受けられるシステム(たとえば,緩和ケア専門外来)の整備 も必要である。

                終末記医療の在り方


 
 がん疼痛治療法とその説明

 
「WHO方式がん疼痛治療法」について,内容を知っている医師,看護職員の割合 は,前回調査に比べて減少しており〔医43%(46%) ,看 20%(22%)〕 ,介護施設職員の 69%が,そのような治療法があることを知らないという状況である。

 緩和ケア病棟においては,「WHO方式がん疼痛治療法」について,内容を知って いる医師,看護職員の割合(医 92%,看 88%)は,その他の病院,診療所等(医 41%,看 17%)に比べて多く,モルヒネの有効性と副作用について患者にわかりや すく具体的に説明することができる医師,看護職員の割合(医 97%,看 76%)も, その他の病院,診療所等(医 40%,看 17%)に比べて多くなっている。

 がん性疼痛治療をはじめとする緩和ケアは,単に緩和ケア病棟に勤務する医師,看 護師だけが提供するものではなく,がん医療のあらゆる領域で必要とされている。
 そ の他の病院や在宅医療で働く医師,看護師を対象に,たとえば『がん緩和ケアに関す るマニュアル』 (厚生労働省・日本医師会監修)を活用して,WHO方式がん疼痛治 療法や「モルヒネの使用」に関する知識と技術を普及させる必要がある。

 今後,WHO方式がん疼痛治療法を普及するに当たっては,従来行われてきた講習 会だけでなく,医師,看護師が知識や技術を実践に結びつけられるような地域ごとの セミナーや症例検討会などきめ細かな研修が必要と考える。
 さらに,在宅患者に対する WHO方式がん疼痛治療法の普及を図るためには,麻 薬等の関連法規を遵守しつつ,運搬,管理,使用,廃棄方法等の取扱い方法を医療現 場に周知していくことが必要である。




 
 終末期医療体制の充実について


 適切な終末期医療の普及のために今後充実していかなければならない点として,医 師,看護職員,介護施設職員は,共通して

  ①「在宅終末期医療が行える体制づく り」 ,
  ②「緩和ケア病棟の設置と拡充」 ,
  ③「患者,家族への相談体制の充実」,
  ④ 「医師・看護師等医療従事者や,介護施設職員に対する,卒前・卒後教育や生涯研修 の充実」,を挙げており,
 これらの施策を進めていくことが必要である。

 おわりに 本検討会ではおもに,痛みを伴うがんの末期患者や,治る見込みのない持続的植物 状態の患者を想定していたが,今後は,がん以外に高齢になって身体が衰弱して,長 期に療養生活を送った後に亡くなる人も想定した終末期医療のあり方も併せ考えて議 論,検討していくことが必要である。本報告書に盛り込まれた内容が,終末期医療に対する一般国民や医療関係者の理解 を深め,終末期医療に対する社会的コンセンサスが得られるよう国民的議論を喚起さ せるとともに,終末期における医療提供体制の充実に寄与することを強く期待する。



 今後の対応

 本報告書においては, 「患者の意思の確認」 「末期状態における療養場所」 「がん疼 痛治療法とその説明」に関しても,意識調査結果を踏まえた議論が展開されている。
 詳細については,厚生労働省のホ-ムペ-ジ(http://www.mhlw.go.jp/shingi/ 2004/07/s0723-8a.html)を御覧ください。
  本報告書を踏まえ,厚生労働省では,望ましい終末期医療のガイドラインの 作成に係る研究に対して,厚生労働科学研究費補助金で支援するとしています。


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